どうすればいい?もう一度忘却術をかける?

 もし失敗してすべての記憶を忘れたら?

 そんなことは出来ない・・・

 でも、彼女のこと思い出しちゃいけないんだ

 思い出したところで何も出来ないのだから

 知らないままでいいんだ












 あのあとハリーとロンは授業の道具を取りに部屋へ戻った


 「あれ?ない。どこいったんだろう??」


 ロンは慌しく何かを探していた


 「どうしたんだい?早くしないと授業遅れるよ。」

 「あ、うん。だけどないんだ。」

 「何が?」

 「花だよ、あの花がないんだ。」


 ロンは今にも泣きそうな情けない焦りに満ちた顔をしていた

 その様子にハリーも焦り苛立ちが募った


 「あれ?何だこれ??」


 ロンがポケットに手を入れると一枚の紙が入っていた


 「『大事なものを預かっている。返して欲しかったら夜談話室に来い。』だって。あいつらだ。」


 ロンはフレッドとジョージがさっき話していた隙にこの紙をポケットに忍ばせたと考えた

 そして2人のところに行こうとしたロンをハリーは腕をつかんで止めた


 「行くなよ。花なんかどうだっていいだろ!!」

 「ハリー?」


 ハリーは苛立ちをロンにぶつけた


 「・・・ゴメン。ロン、行く必要なんてないだろ。あの花、諦めようよ。」


 今度は優しく懇願するように言った

 そんなハリーの様子にロンは何も言えなかった



















 夜、みんなが寝静まるころロンは起き上がりベッドから出た


 「ハリー、ゴメン。僕どうしてもあきらめられないんだ。」


 ロンは寝ているハリーを申し訳なさそうに見た


 僕は何をしているんだろう

 親友であるはずのハリーの反対を押し切ってまで

あの花を取り戻そうとしている

 自分でもなぜそんなに大切なのか

今でもわからない

 でもきっと、僕の心の中で引っかかっている何かを解く鍵なんだ


 














 「やぁ、ロニィ。」

 「やっぱりきたな。」

 「・・・・・・。」


 ロンは何も言わなかった

 
 「返せよ。」


 ロンがフレッドとジョージを睨むと二人はクスクス笑い出した


 「まぁ、そう怒るなよ。ほら。」


 フレッドはロンに花を渡した

 ロンはそれを受け取り部屋へ戻ろうとした


 「あぁ、ちょっと待て。」

 「なんだよ。」


 ロンはため息をつき2人を見る

 
 「どうしてお前はハリーと喧嘩してまでこれが欲しいんだ?」

 「何か思い入れがあるのかい?」


 2人は真剣な顔をした

 その表情にロンは驚き不信感を抱いた


 「・・・何か知ってるのかい?」

 
 窺わしげに2人に聞く


 「「付いて来いよ。」」

















 こっそり外に出て、しばらく歩いて2人は立ち止まった


 「・・・湖?」


 そこは以前ロンがと出逢ったあの湖だった

 もちろんロンにそのころの記憶はない

 しかしロンは何か懐かしいようなそんな気がした


 「あぁ、そうさ。」

 「ここ、記憶にない?」


 今だ真剣な顔をする2人

 ロンは辺りを見回し湖を覗いた

 覗いた湖の上に綺麗な月が映っていた


 「・・・・あ。」


 見覚えがある

 何だか前にここに来た気がする

 あの日僕は寝付けなくて外を散歩していた
 
 あの日もこんな月をしていた

 そしてその光の下で何かが・・・・


 「おい、ロン。何か思い出したか?」


 フレッドが呆然と立ち尽くすロンの肩を揺すった


 「歌・・。」


 そう、歌が聞こえた

 綺麗な声で歌っていた悲しい曲



 『人間になりたかった』



 ロンの中でいろんな記憶が走馬灯のように駆け巡った


 「あぁ・・だ。はどうしたの?」


 フレッドとジョージは黙っていた

 ロンの記憶を戻すことに成功したものの

 これからのロンの苦しみを考えると辛かった

 しかしこうなることを覚悟して2人はロンの記憶を戻したのだ

 
 「彼女は今まで1人だったから。」

 「その寂しさを今度はお前が耐える番だ。」


 ロンはその場に崩れた

 
 「僕の・・せいだ。は・・・彼女は、自分を身代わりに僕を・・・」

 「それが彼女の望んだことだったんだ。」


 2人はロンの方は見ず俯いていた

 
 「嫌だー!ーーー!!きっと人間になるって言ったじゃないか。
 
 それまでは僕がいろいろ話すって。ずっと側にいてくれよ・・・。」


 ロンはただ泣き続けた

 大好きな、とても愛しいのことを考えながら

 気が付けば手に握り締められた花はぐちゃぐちゃで

 何枚か花びらが落ちた

 ロンはそれを集め抱きしめた


 どうにもならない想い

 ただ君に会いたい























 新学期

 ロン、ハリー、ハーマイオニーの3人も1つ学年が上がった

 そしてロンのポケットの中には瓶詰めにされたあの花びらがいつも入っていた

 常にを側に感じていたくて


 毎年恒例の1年生の組み分けが終わったころダンブルドア校長が現れた


 「あぁ、ここでもう1人みんなに紹介したい仲間がおるんじゃが。」


 ロンはダンブルドアが自分を見ていることに気が付いた

 そしてダンブルドアが大広間のドアに向かって魔法をかけると

 ドアが開き少女の姿が見えた


 小さくて綺麗な瞳の少女


 「・・まさか・・・。」


 ロンは息を呑んだ

 彼女ははまっすぐにテーブルとテーブルの間の道を歩いた

 近づいてくれば来るほど確信する

 あのときとは違う姿だったけど

 間違いない


 「じゃ。」


 ダンブルドアの隣まで行き笑顔で立っている

 髪には白い花の形をした綺麗な髪飾りをつけていた


 「!!」


 ロンは我を忘れ叫んだ

 そして駆け足での元へ行く

 そして思いっきりを抱きしめた


 「ロン?あなたなの?」


 ロンは頷いた


 「ねぇ、こんなところで恥ずかしいよ///」


 の言葉にロンははっと自分がしたことに気付き顔を真っ赤にした


 「驚いた?」


 相変わらず優しい無邪気な笑顔でロンを見た


 「あ、うん///でも、何で?しかも人間に・・・」

 
 ロンは恥ずかしさと驚きでしどろもどろしていた

 
 「それはね・・」


 はニコニコしながら自分のポケットをぽんぽんっと叩いてロンを見た

 
 「ん?」


 初めよくわからなかったがロンはとりあえず自分のポケットの中をあさった

 なかから出てきたのはあのビンだった


 「その花、願いを叶えてくれるって言ったでしょ?

 私信じてなかったけど、きっとロンが私のことで願ってくれたから私は今ここにいると思うの。」

 
 はふわりと笑った


 「ありがとう。」










 人魚姫のお話は片思いの恋物語

 両思いになった人魚は

 結ばれて幸せを手にするのだ

 これは愛し愛された人魚の恋物語





 fin…


                   めにゅ