人魚姫のお話を知ってますか?
 
 人間に恋をした人魚は泡となって消える
 
 それが掟―――
 
 
 
 
 これはある人間と人魚の物語
 
 
 
 
 
 
 
 人魚姫
 
 
 
 
 
 
 夜、僕はなかなか寝付けないでいた
 
 おそらくこの暑さとルームメイトのいびきのせいだろう
 
 それでちょっと涼もうと僕はハリーのマントを拝借して外に出た
 
 外は風が吹いていて気持ちよかった
 
 
 
 
 
 「ん?」
 
 
 
  
 
 しばらく歩いているとどこからか歌声が聞こえた
 
 僕はその声の主を探し始めた
 
 
 
 
  
 
 数分後、目の前に湖が見えてきた
 
 その湖は真っ暗で月明かりだけが差し込んでいた
 
 明かりの下には人影が見えた
 
 声の主はこの人だとすぐにわかった
 
 
 
 
 
 人魚
 
 
 
 
 
 照らされた主の足は魚の形をしていた
 
 別に人魚なんて珍しくはないけど
 
 水中から出てきてるのは珍しい
 
 
 人魚は近くの石に座って歌をうたっていた
 
 綺麗な瞳をした小さな女の子だった
  
 
  
 どこか悲しい歌・・・・
 
 彼女の歌を聴いてそう思った
 
 
 
 ガサッ――――
 

 
 歌に聞き惚れて僕は誤ってマントを落としてしまった
 
 その音に気付いた彼女ははっとこっちを見て湖に戻った
 
 
 
 
 
 
 
 もっと聞きたかった
 
 とても綺麗で悲しみを感じる歌
 
 何でこんなところで歌ってたんだろう?
 
 
 彼女のこともっと知りたい
 
 

 
 








 
 「可愛かったなぁ。」
 
 「へぇ。きみがそこまで言うなんて相当可愛かったんだね。」
 
 「あんなに水中人のことばかにしてたのに。」
 
 「彼女は別格さ。」
 
 
 朝食の時間、早速ロンは昨夜の出来事を話した
 

 「ところでキミは勝手に僕のマントを使ってたんだね。」
 
 「あぁ、ゴメン。でさ、今日も借りていいかな?」
 
 「ロン、あなたまた行くの?言っておきますけど、人魚と人間は結ばれないのよ。」
 
 「そ、そんなんじゃないよ///」


 ハーマイオニーの指摘に顔を赤らめながら急いで朝食をつめ込んだ
 
 
 









 
 
 
 その夜、ロンは再び湖に向かった
 
 そこには昨夜と同じように彼女が座っていた
 
  

 今日は歌っていない
 
 少女は髪飾りを手に取り匂いをかいだり月に照らしたりしていた
 
 白く綺麗な花の髪飾り
 
 彼女は今日も悲しげな顔をしていた


 どうして?

 
 聞きたいけれど声をかければまたいなくなってしまうだろう
 
 もう少し彼女を見ていたい
 
 その想いから何日経ってもロンはずっと声をかけられずにいた
 
 
 

 
  
 

 
 「話しかけてみればいいじゃないか。」
 
 「だ、だってそんなことしたら逃げられちゃうよ。」
 
 「ずっと影から見てるんじゃストーカーみたいじゃないか。」
 
 「そんな。」
 
 「大丈夫だって、頑張れよ。」
 
 
 そうは言われたもののロンは自信がなかった
 
 そして夜になってもロンは悩んでいた
 
 
 
 ハリーの言っていることはわかる
 
 だけどまた逃げられたら?
 
 結局話すことなんか出来ないじゃないか
 
 それに、彼女に話しかけることなんて考えただけで緊張してしまう
 
 
 
 考えながらもとぼとぼ歩きロンは湖まで来た
 
 少女は初めて会った頃と同様に歌っていた
 
 彼女の悲しげな顔も歌声もすべて綺麗だと思った
 
 見ているだけで頬が少し熱を感じた
 
 もっと彼女に近づきたい

 
 

 

 「あ、あの。」
 
 
 気が付いたら声をかけていた
 
 彼女はそれに気付き歌うのを止めあたりを見渡した
 
 そんな彼女を見てロンは自分が透明マントを着てることを思い出した
 
 
 「あぁ、しまった。」
 
 
 ロンが急いでマントを脱ぐと少女は驚き慌てて逃げようとした
 
 
 「待って!!」

 
 ロンは必死に叫んだ
 
 
 「僕はただ君と話したいだけなんだ。だから行かないで。」
 

 ロンの顔は真っ赤だった
 
 その様子を見た彼女はそっとロンに近づきにこっと笑った
 
 
 「私と話したいの?」
 
 
 ロンは彼女が戻ってきたことに驚きあたふたしていた
 
 
 「あ、うん。君のこと、いろいろ知りたい。」
 
 「そっか、私も人間の友達欲しかったの。本当はいけないんだけどね。」
 
 
 彼女は舌を出しておどけて見せた
 
 
 「私は。あなたは?」
 
 「えっと・・・ロン。」
 
 「そっか。よろしくね、ロン。」
 
 
 彼女はロンに二度目の笑顔を向けた